奥行きは深く、存在としては軽やかな庇のディティールです。
構造や形状、素材、雨水処理といった各点を関係づけて設計を紐解くことで、庇にありがちな「とってつけた」造作物となるのではなく、建築に連続的に調和した庇をデザインしました。
この庇は、この店舗建築のメインファサード(顔となる外観)となります。
そこで、単なる雨しのぎやガラス汚れ防止の役割達成にとどまらず、ファサードとしての美観的な在り方に注意を払って設計をしました。

具体的には、まず、庇先端のシルエットを薄くしている。庇の存在感が「ごてごてとした重々しい感じ」とならないように、あくまでスマートでミニマルな印象に仕上げるには「薄い」表現が適している。



庇先端のシルエットを薄くするために、構造にはT字構の鉄骨梁を採用した。T字構の鉄骨梁の下半分は軒天からあえて飛び出し露出させることで、軒天の懐を浅くし、それによって庇を薄くすることを実現している。

T字鉄骨梁を受ける柱も鉄工の丸柱として、構造上許す範囲で口径をやや細みとし、端正で軽い印象としている。

鉄工の丸柱が1820mm等間隔で並ぶが、板金屋が手製で製作してくれた超スリムな軒樋には、実は雨水を落とすための雨水穴を開けている。雨の際は、この雨水穴から雨の雫が落下して排水できるディティールとした。そうすることで、美観を損ないがちな縦樋を省略することが実現できた。かつ、お客様は行き帰りの際に庇の軒先から雨水が滴り落ち、頭を濡らすことがなくなる。このような雨水の処理の仕方のディティールを考案しデザインした。

軒天は外壁材と同じくヒバの無垢板を貼っている。何も考えずヒバ板材をただ単に乱尺貼りにしては、この店舗に相応しくないノイジーな印象・ワイルドな印象となってしまうように感じた。
そこで、いわば朝鮮貼りのような整然とした軒天の貼り方とした。ヒバ板材の1枚あたりの長さは、建築の窓の長さに揃い、かつ、鉄工柱にも揃う。実は室内の構造柱やセット面の鏡の間隔にまで揃っている。ノイズレスな、違和感を発生させないディティールとした。


そまざまな要素を「揃える」「関係づけて考案する」ことで、几帳面で気が行き届いたきれいな印象を生み出すことができた。
この「几帳面で気が行き届いたきれいな印象を」とは、この店舗のTen to Senがお客様に届ける価値そのものと親和的であるので、店らしさを助長するデザインとなったと思う。

照明が点灯する時間になると、この庇は、照明の演出装置となる。やはり柱間隔・窓ガラス間隔にぴったりと几帳面に揃えたダウンライトの灯りは、庇下の土間に地あかりをもたらし、しっとりとした光の演出をする。
